外国からみた日本语の方言(2)

2025-05-11

欧米の言語では、女性の方が標準語により近いことばを使うと報告されている。性差による日本語の相違は、海外の言語学者の間でもよく知られているが、そこで、日本は他の言語と同様、女性の標準語志向が見られるかという質問をよく受ける。しかし、その一方で、この傾向にかかわる重要な指摘もいくつかなされている(井上 1991)。これらは、日本語を対象としている学者のみならず、言語学者一般にとっても貴重なデータなので、その存在をもっと積極的にアピールすべきである。

⑧ 日本で方言学の研究は行われているのか?

非常に残念なことに、日本では昔から方言の科学的研究がさかんに行われていることを意外に知らない人が多い。英語で書かれた方言学の代表的入門書を見ると、日本語の方言研究のことはほとんど紹介されていない。私は、大学の教科書として広く利用されている3つの本を調べた(Chambers and Trudgill 1980, Petyt 1980, Francis 1983)。いずれにも、フランス語やドイツ語の方言研究は紹介されているが、日本の方言学のことはまったく出てこない。 最近の例外として、「社会言語学理論」と名付けられたチェンバーズの本がある。そこでは、有数の実時間変化の研究として、第3回鶴岡調査の結果を5頁に渡って紹介されているが、この出典にあげられているのは口頭発表の原稿だけであり、一般の学者には入手不可能なもので、極めて残念である(Chambers 1995: 194-198)。

⑨ 日本語の方言研究に関する論文は なぜあまり英語で発表されない? 以上の方言学に関する教科書の状況を見ると、欧米の学者は日本の方言研究にあまり興味をもっていないように受け取られるかもしれないが、私の経験ではそうではない。つまり、日本語の研究が方言学の入門書に登場しないのは、英語で書かれた情報が相対的に少ないからであって、けっして関心度が低いわけではないのである。

一方、外国人の学者は日本語に関する言語学の論文にはどうせ興味がないだろう、と思い込んでいる日本の学者もいるようであるが、こうした誤解は結局、日本語の方言をなぜ研究するのかという意義に対する考え方の相違によるものであろう。すなわち、日本の方言研究者の多くは、その研究の最終的目的が「日本語を知ること」にあると考えているようであるが、海外の方言研究者の多くは、個別言語への理解ではなく、「人間の言語そのものを知ること」に関心があるのである。

医学、工学などの研究分野では、国際的な情報交換が普通になっているが、日本の方言学は比較的内側向けの学問になっている。日本で出版されている学術論文の言語別の数を見れば、このことが明らかになる。1966年から1980年の4つの年に出版された論文の件数と、英語など日本語以外の言語で書かれたパーセントを下の表で示す(筆者の集計による)。日本で出版された医学関係の研究論文において、外国語で書かれたものは年々に増える傾向にある(マーハ1991:47)。また、日本語の音声学?音韻論に関する論文で、外国語で書かれたものは全体の3割を占めるが、日本語の方言学の外国語による論文は昔から少ない。この数値から見ても、日本語の方言学がなぜ海外の学者から無視されてきたかを知ることができる。

なお、英語による日本の方言研究に関する情報については、英語などの西洋言語で書かれた1000件以上の書物を含む文献目録(Long 1997)を参照されたい。

日本で出版された学問的論文が書かれた言語 分野 方言 一般 研究論文 1966年 1970 1975 1980 合計 全体件数 156件 130 英語等% 1.9% 3.1 144 123 0.7 0 101 97 553 1.4 343 22.2 27.1 音韻?音声 全体件数 67件 78 英語等% 10.4% 20.5 27.7 29.0 英語等% 24.0% 22.3 28.1 33.2 全体件数 8865件 10,459 9,743 10,935 40,002 ⑩ 日本の方言研究で役立つ情報はないか?

すでに女性の非標準語使用など、他言語の研究者にも知ってもらいたい研究結果や方法論について触れたが、ここでは、これら以外に、外国の言語学者にもっと知ってもらいたいこと、日本の方言学者がもっと自慢すべきことを4点ほどあげてみたい。(1)日本でよく使われているグロットグラムは、言語事象の地理的伝播を、「見掛け上時間」の中で捉らえるのに最適な道具であるが、欧米ではほとんど知られていない。(米国と日本の方言学の研究方法の違いについてはロング1996を参照されたい。)Inoue 1983などでは紹介されているが、グロットグラムは1つの言語事象だけではなく、使用頻度(真田 1979)

の面や文法体系(ロング 1995)の伝播を追究する道具としても役立つことを広くアピールしなければならない。(2)世界的にも珍しい全国規模の語彙分布図集(LAJ)や貴重な文法事項の分布図集(GAJ)、そしてそれに基づいた研究を日本以外の学者にも知ってもらいたい。(3)国立国語研究所の実時間変化の言語調査などは、英文ではほんのわずかしか紹介されていない(Egawa et al. 1986)。(4)英語圏では、文法レベルにおける研究は非常に少ない。しかし、日本語では、ヴォイス(森山?渋谷 1988),アスペクト(井上 1992)、往来表現(陣内 1991)、授受表現(日高 1994)、待遇表現(Sanada 1993, 宮治 1996)などにおける変異研究は、語形の違いにとどまらず、統語論のレベルにまで浸透している。これらの言語事象を、日本語の一方言だけで起きる現象としてだけではなく、世界の中での一言語体系に見られるものとして把握されるためにも、その研究が是非広く知られるべきであると思う。 参考文献

井上 文子 (1991) 「男女の違いから見たことばの世代差 ―“標準”意識が男女差をつくる」『月刊日本語』 4-6:14-18

井上 文子 (1992) 「[アル],[イル],[オル]によるアスペクト表現の変遷」『国語学』 171:20-29

任 栄哲 (1993) 『在日?在米韓国人および韓国人の言語生活の実態』 くろしお出版

金田一 春彦 (1957,1988) 『日本語』 岩波書店 真田 信治 (1979) 『地域語への接近』 秋山書店

陣内 正敬 (1991) 「[来る]の方言用法と待遇行動」 『国語学』 167:15-23 日高 水穂 (1994) 「越中五箇山方言における授与動詞の体系について ―視点性成立過程への一考察―」『国語学』 176:14-25

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